習得重要度A猿払事件判決についての話。事件については。「猿払事件」を参照されたし。


公務員にも政治活動の自由はもちろん保障されています。
この場合、15条や21条の「表現の自由」によって保障されています。

しかしながら、既出のように、
公務員という特別な法律関係に入った者は一般国民とは異なった、
制約を受けることになっています。

日本国憲法下では特別権力関係理論を否定している以上、公務員の人権制約
には法律が必要ですが、既に法律によって制約を受けることが規定されています。
国家公務員法の102条1項です。

国家公務員法102条1項【政治的行為の制限】

職員は、政治又は政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らかの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。

どんな目的が「政治的目的」なのか、
あるいはどんな行為が「政治的行為」なのかが不明
ですよね。
この「政治的目的」、「政治的行為」について、「人事院規則14-7」で定義しています。
リンク貼りましたので、よろしければ参照してみてください。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S24/S24F04514007.html

ご覧のように、
公務員は政治活動について、特別の制約を受ける法律が存在しますので、
この国家公務員法と人事院規則の合憲性、正当性を検討してみましょう。

猿払事件

この点、
猿払事件」という有名な最高裁判決があります。

この事件は、
北海道猿払村の郵便局に勤務し、同地区の労働組合に所属する職員が、
昭和42年の衆議院選挙の際、勤務時間外に日本社会党を支持する目的
を持って選挙用ポスターを掲出しました。

この行為が先の国家公務員法の規定に抵触し、
罰金を命じられる刑事罰事件に発展しました。

そこで、この規定の合憲性が問われる裁判の最高裁判決です。

公務員の政治活動が制限される根拠と許される度合い

行政の中立的運営が確保され、これに対する国民の信頼が維持されることは、憲法の要請にかなうものであり、公務員の政治的中立性が維持されることは、国民全体の重要な利益に他ならない・・・公務員の政治的中立性を損うおそれのある政治的行為を禁止することは、
それが合理的で必要やむを得ない限度にとどまるものである限り、憲法の許容するところである

こちらは「猿払事件」の判旨の一部分ですが、この部分ではまず、公務員の政治活動が制限される根拠について述べられています。

赤字2つのところ、「公務員の政治的中立性が維持されることは、国民全体の重要な利益」とあります。つまり、この利益を損なうほどの政治活動は禁止できるということですね。ここが規制の根拠です。

公務員の政治活動が許されるレベル基本的に、公務員も政治活動の自由があるのです。

しかし、
それは、国民の利益である、公務員の政治的中立性が担保される程度まで、公務員の政治的中立性は国民全体の重要な利益であり、この政治的中立性を損うほどの政治活動は許されない、ということです。

そして、
判旨では当該法律が違憲か合憲かの判断をしています。

問題の法律の合憲性

行政の中立的運営とこれに対する国民の信頼を確保するための措置の目的は正当で・・・公務員の政治的中立性を損うおそれがあると認められる政治的行為を禁止することは禁止目的との間に合理的な関連性がある

(これにより)得られ利益は、失われる利益に比して重要

つまり、公務員の政治活動を規制する措置は、
規制の目的が正当であり、目的と規制手段との間に合理的関連性があり
また、禁止によって得られる利益は失われる利益に均衡が取れていれば合憲
である、という規範を立てました。

この判決は、学者から批判があったりしますが、
国家公務員法102条等を合憲としました。