第1条【天皇の地位・国民主権】

天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。

上は日本国憲法の第1条です。
題が「天皇の地位・国民主権」となっていますが、
象徴天皇制・国民主権を第1条で謳っています。
つまり、主権者は日本国民である、と。

大日本帝国憲法第1条

明治憲法(大日本帝国憲法)でも、主権者については第1条で謳っています。

第1条

大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス

シンプルな規定ですが、これだけではちょっと難しいと思いますので、
解説します。

解りづらい単語は「万世一系」だと思いますが、
これはこのまま「ばんせいいっけい」と発音します。

これは、天皇・皇室の家系が永遠に続くといった意味合いですが、
この「万世一系」を知るには天皇の歴史を知る必要があります。

天皇(日本)の歴史

質問します。
現在、世界中にある国で、最も古くから存在する国はどこでしょう?

勘の良い方なら解っちゃったかもしれませんが、答えは日本なんですね。
しかもダントツで古い。

中国と思った方も多いかもしれませんが、
現在の中国は、たかだか60年ぐらいの歴史しかありません。
あの地域の歴史は革命の歴史といっても差し支えありません。

デンマークやアフリカのどこかの国(ちょっと忘れました)も歴史は長いようです
が、それでも日本が現在する世界最古の国というのはゆるぎない。

「日本書紀」によると、天照大神(あまてらすおおみかみ)の子孫である神日本
磐余彦尊(かむやまといわれひこのみこと)が東征を開始(神武東征)し、橿原神
宮にて神武天皇として初代天皇に即位したのが紀元前660年の2月11日となっています。

この神武天皇を初代として数えて現在の今上天皇まで125代、
同一の家系でしかも男系で君主の地位を連綿と築いています

つまり、日本という国家は、
国家の体をなしてから2013年で2673年目というこ
とになります(よって、2013年は、「皇紀2673年」ということになります)。

私たち日本国民は、世界で最も長い歴史を持つ国家の国民なのです。
ちなみに、現在、2月11日は建国記念日として祭日になっていますが、以前は
「紀元節」としていました。

まさに、日本という国が始まった日ということなのですね。

井上毅の憲法草案

つまり、「万世一系」とは、日本という国の本質を表すキーワード、日本の国
体(国柄)を表す言葉であり、1条ではその天皇が日本を統治すると規定して
います。

これだけ読めば、
「ああ、明治憲法では主権者は天皇なんだな」としてしまっても決しておかし
くありません。日本国憲法と対比すると、むしろそうした解釈の方が自然でしょう。

大抵の憲法学者はここで話を終わらせてしまいました。あるいは、
知っていても意図して終わらせたのか。ともかく、話はまだ続きます。

この大日本帝国憲法の草案を作った人物、
「井上 毅(こわし)」なる男がいました。
この1条について、彼が作った草案ではこう記されています。

第1条(草案)

大日本帝国ハ万世一系ノ天皇ノ治ス所ナリ

実際の1条と殆ど変わりはありませんが、
「統治ス」と「治ス」が違います。「治ス」とは「シラス」と発音しますが、
これは「古事記」に出てくる古語です。

「治ス」とは、天皇統治の公共性を表す言葉で、
天皇個人やその一族のために国を統治するのではなく、公平に納めるという統治
形態を集約した言葉になります。

この「治ス」と対概念になるのが「領(ウシハ)ク」です。つまり、
「支配する」ような意味合いですね。

これが一般的にいうところの独裁、中世ヨーロッパや、
現在でも世界中に存在する独裁国家に近いニュアンスだと考えて差し支えないでしょう。

この「治ス」という概念は、世界でも類を見ない、
天皇の特殊性、日本独自の民主主義を表す本質の
ひとつかもしれません。9条は世界に誇るものなんていう人たちがいますが、むしろ、
こっちだと思うんですけどね。

有名なエピソードに「民のかまど」というものがありますが、この「治ス」の
表れではないでしょうか。絶対に後世にも語り継がなければならないお話です。

井上毅は、憲法の研究を進めていく中で、
日本の長い歴史・伝統・国柄を明らかにし、それを基に憲法を起草する
としていたそうです。1条の短い文言にはそういった想いが込められているのです。

明治憲法下の天皇は独裁者ではない

どうでしょう、「明治憲法は天皇主権だ、天皇絶対主義だ!」という主張は、
必ずしも正解ではないとは思いませんか?
こう主張する人たちは、当時の天皇を独裁者のイメージで語っているはずです。

独裁者というものは、おのれの一存で国をどうにでもできる者。己の保身のため
には私腹を肥やしても全然ありだし、邪魔な者はたとえ名もなき民衆でも抹殺する。
歴史が証明していますよね。

天皇はそうだったでしょうか?
大日本帝国憲法でもそう規定されているのでしょうか。

日本国憲法の成立過程はそれは特殊で、
ご存じのようにGHQの占領下に制定された憲法です。

その草案は、日本人が関わったわけではなく、憲法のスペシャリストもいなく、
日本の歴史・伝統なんぞ知る者もなく、当然に日本という国を尊重する気もなく、
たかが10日程度の突貫工事で作られたものです。

当然ながら、そこには日本の国体など無視した、
西洋の価値観(自然権思想・社会契約論・個人主義・・・etc)を基にした、
「GHQにとって都合のよい」新しい日本の出発としての憲法です。

西洋の価値観が必ずしも悪いとは言いませんし、
個人の人権もいうまでもなく非常に重要です。
そして、明治憲法の規定各々が日本国憲法の規定より特段素晴らしいとも思いません。

ただ一つ確実なのは、「根底に流れているもの」が全く違います、間違いなく。
根底に流れているものが違えば、枝葉も違いますよね。

参考文献:八木秀次著「日本国憲法とは何か」PHP新書



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