習得重要度Aこの判例、行政書士試験でまんま丸ごと出題されていた。つまり、判例のしっかりした理解があれば正解できる問題が出題されている。「八幡製鉄政治献金事件」との違いを、しっかり把握できるように。


事案

強制加入の公益法人「南九州税理士会」が、税理士法改正が業界に
有利に動くように、南九州各県税理士政治連盟への政治工作資金として
特別会費5千円を徴収する旨を決定しました。

しかし、
この決議に反対した税理士が、会費納入を拒否。

そこで、
当該税理士会は、当該会員税理士を、会則で定められた
会員滞納者に対する役員の選挙権及び被選挙権停止条項を行使します。

当該会員税理士は、
会費納入義務の不存在確認及び損害賠償請求訴訟を提起しました。

争点

この事件の争点は以下の点にあると考えてください。

  1. 政治団体への政治献金は、強制加入である税理士会の「目的の範囲外」の行為か

「目的の範囲」について-補足説明

「目的の範囲」ということについて、簡単ではありますが
ご説明させて頂きます。

旧民法の「法人の能力(現民法34条)」に、
法人の行為能力は、定款(社団法人の場合)
又は寄付行為(財団法人の場合)に定められている目的の範囲内においてその権利義務がある、と規定されています。

民法34条 (法人の能力)

法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。

法人というものは、
法律によって民法上の権利能力、行為能力というものが認められますが、
その法人の行為や権利は、当該法人の定款や寄付行為(現在は定款に統一)に定められている目的の範囲内においてのみ、法人としての行為が認められるわけです。

この裁判の争点になっている「目的の範囲外」というのは、
南九州税理士会という公益法人の行為、つまり、
政治団体への政治献金は、民法34条でいうところの「目的の範囲」内の行為なのか、それとも、「目的の範囲」外の行為なのか。

目的の範囲外の行為であれば、民法違反、無効ですので、
当該会員税理士が南九州税理士会から受けたペナルティーは
そもそもあり得ないことであり、違法(不法)行為ということになります。

南九州税理士会事件のイメージイラスト

第1審、控訴審

そこで、
第一審は南九州税理士会の政治献金行為は目的の範囲外と認定、
第二審はひっくり返って目的の範囲内と認定。
そして、最高裁判断です。

判旨要約・解説

税理士会が政党など政治資金規正法上の政治団体に金員を寄付することは、たとい税理士に係る法令の制定改廃に関する政治的要求を実現するものであっても、
税理士法49条2項で定められた税理士会の目的の範囲外の行為であり、右寄付をするために会員から特別会費を徴収する旨の決議は無効であると解すべきである・・・

会社における目的の範囲内の行為とは、定款に明示された目的自体に限局されるものではなく、その目的を遂行する上に直接又は間接に必要な行為であればすべてこれに包含される・・・

税理士会は、会社とはその法的性格を異にする法人であって、その目的の範囲については会社と同一に論じることはできない・・・法が、あらかじめ、
税理士にその設立を義務付け、その結果設立された・・・強制加入団体であって、その会員には、実質的には脱退の自由が保障されていない。

その目的の範囲を判断するに当たっては、会員の思想・信条の自由との関係で、会員に要請される協力義務も、おのずから限界がある。
特に、政党など規制法上の政治団体に対して金員の寄付をするかどうかは、選挙における投票の自由と表裏を成すものとして・・・
個人的な政治的思想、見解、判断等に基づいて自主的に決定すべき事柄である・・・

殆ど同じような事例の事件に、
八幡製鉄政治献金事件」があります。

比べて頂ければおわかりになると思いますが、結果も認定も違います。
なぜでしょうか?

この判旨のポイントは、
税理士会が強制加入団体であることです。

つまり、税理士として生計を立てていくには、
税理士会の加入が義務だってことであり、脱退することは
イコール税理士としての仕事が出来ないということ。

税理士会は、そういった性質の団体であるから、
各会員に課す協力義務には場合によっては、
人権侵害にあたることがある
としています。

八幡製鉄は、普通の民間企業です。
その意味では、強制加入団体ではないのですね。

特に特定政党や政治団体への政治献金行為は、
各人の思想などにおいて各人で自主的に決定する類のものであり、
選挙権における投票の自由を侵害しうるものであると判断しています。

そして、
寄付のために会員から特別会費を徴収する旨の決議は無効と判断され、
政治献金は目的の範囲外としました。

ただし、これは公益法人の場合であって、
例えば、会社のような営利法人などの目的の範囲はもっと広く解釈する
べきとも判旨しています。

もちろん、これは、八幡製鉄事件の場合とのバランスですね。



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