思想良心の自由が外部に表示されたらどうなるかを現している良い材料になる判例。余談だが、この事件の中学生とは現世田谷区長であり、裁判の弁護団のひとりは当時民主党の元代議士である。興味あればご自身で調べて。
事例
上告人は、当時中学生であり、
1971年に東京都千代田区立麴町中学校を卒業を予定していました。
高校進学にあたって、私立公立受験していましたが、すべて不合格。
後日、上告人の自分の内申書に、
「学校構内において、麹町中全共闘を名乗り、機関紙『砦』を発行、文化祭で文化祭粉砕を叫び他校生徒と構内に乱入、ビラ撒きをした。大学生のML派(マルクス・レーニン派)集会にも参加、学校側の指導説得も聞かずビラ撒きをした」等と記載されていたことが判明しました。
上告人は、高校受験に失敗したのはこの内申書のせいだとして、
千代田区及び東京都を相手どり、国家賠償請求法に基づく慰謝料の支払いとし
て損害賠償請求訴訟を起こしました。
第1審、控訴審
第1審では、「中学生において、思想信条の如何によって生徒を分類評定する内申書作成行為は違法」であるとして、慰謝料請求を認めました。
控訴審では、上告人の内申書記載諸行為を、
「高校側の指導を要するものとして知らしめ、もって入学選抜判定の資料とさせる」
ことは違法ではないし、第1審から反転、慰謝料請求を斥けました。
そして最高裁判決。
判旨・解説
X(上告人)の思想信条そのものを記載したものでないことは明らかであり、右の記載に係る外部的行為もよってはXの思想信条を了知し得るものではないし、
また、Xの思想信条自体を高等学校の入学者選抜の資料に供したものとは到底解すことができないから、所論違憲の主張は、その前提を欠き、採用できない。
判旨では、「思想信条そのものを記載したものでないことは明らか」とありますが、
上告人の諸行為は思想信条を推知するには十分なものであるといえます。
「麹町中全共闘」を名乗るって時点でどうもうねえ、どんな思想信条かは
わかるってものです。
19条が内心的には絶対的保障で、外部に表示されれば規制の対象になり得るとしても、
思想の表明を理由に規制されるということはよろしくない、という意味では批判はできる判旨であるといえると思います。
ただ、最高裁の見解は、この手の事件に関しては一貫しています。
思想表明だったら何でも許されるのか?
但し、思想表明だったら何をしてもいいのかとなると、そうではないと思います。
このXさんは、
思想の表明だか何だか知りませんが、校内の風紀を乱す行為といえるでしょう。
それは問題なのであって、内申書に記載されたのでしょう。
思想表明を使って問題行為を起こしたのは事実です。
時代が時代だからと言えばそうかもしれませんが、
思想表明は他に方法はなかったのでしょうか?
この手の問題は、卒業式時期になると今でも事件が起こります。
いい加減に「目を覚まして」ほしいと思います。
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