この事件自体は、試験との関係では、それほど重要度は高くない。ただし、判旨に出てくる「前文の裁判規範性の問題」という論点については、是非確認しておきたい。
この事件は、自衛隊関連の事件で、憲法学的にも社会学的にも、結構重要なことが争点になっていたんですが、ここでは、ある一点についてのみ取り上げ、裁判自体にもごく簡単に触れるに留めたいたいと思います。
その一点とは、前文の裁判規範性についてです。
前文の裁判規範性の問題は、こちらを参照してください。
それでは、事件の概要から見てみましょう。
事件の概要
防衛庁(当時)が、北海道夕張郡長沼町の国有保安林にミサイル基地を建設するため、当時の農林大臣が国有保安林の指定を解除を許しました。
この国有保安林指定解除には法律上の縛りがあり、森林法26条2項の「公益上の理由」でなければ指定解除はできず、当該指定解除はこの「公益上の理由」に当たると言うことで指定解除したということです。
しかし、これに怒ったのが地域住民です。
憲法9条があるのだから、そもそも「公益上の理由」がどうこう言う話ではないとして、昭和44年7月7日、当該農林大臣に対して処分の取り消しを求める訴えを提起しました。
判旨要約・解説
平和的生存権が「第三章の各条項によって、個別的な基本的人権の形で具現化され、規定されている」
この裁判、当事者間の争点には、前文にある「平和のうちに生存する権利」、いわゆる平和的生存権が争点になったわけではありませんでした。
判決文にいきなり出てきた争点だったわけですね。
つまり、裁判官が、職権(裁判官の権限)で争点にした、ちょっと変わった判決なんですね。
ここに挙げた判旨部分は、日本国憲法第三章は、前文2項で謳われている平和的生存権を具体化したものであるとしています。
つまり、前文の裁判規範性を肯定しているんですね。
学説との結論の違い
ちなみに、前文は各条文のような具体性を欠くということで、
学説では前文の裁判規範性を否定するのが通説になっています。
この裁判、その他の争点も相まって、自衛隊を違憲と判断しています。ただ、地裁レベルの判断になり、控訴審では砂川事件の流れを組む統治行為論を採用し、司法審査の対象外としています。
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