試験との関係ではそれほど重要ではないが、近代憲法の理解としては重要な概念。試験問題として出題される可能性は低いが、「立憲主義」の意味位は理解しておくべき
国家権力というものは、時として暴走してしまうものです。
それは、歴史が示しているので、皆さんもご存知のことでしょう。
人間というものは弱いもので、どんな人でも一旦強大な権力を握ると、自分たちの都合のいいように権力を発動しがちですよね。私は世界史に詳しくないので良くは分かりませんが、ヒトラーなどは典型例なのでしょうね。現代社会でもそんな光景は散見されます。
「立憲主義」とは
いにしえの人たちは、そんな光景をよく見ていたので、教訓にしていたのです。
そこで、国家権力を担う人たちが法律等によって国民たちの権利・自由を
不当に侵害しないよう、一定の歯止めをかけようとしました。
それが「憲法」です。
このように、国家権力に対してその権力行使を制限し、
憲法に基づく政治をすることを「立憲主義」と言います。
立憲主義に基づく憲法は、人間の権利・自由の保障と、
そのための国家組織の基本を制度化したものになります。
ここの、国家権力の横暴による人権侵害に歯止めをかけるためのものが憲法、そして、その憲法に基づく政治をすることを立憲主義、という感覚は、是非、身に付けておくべきです。
近代憲法の基本理念ですし、日本国憲法も近代憲法ですからね。ちなみに、日本は「立憲君主国」です。
ジョン・ロックの自然権思想が立憲主義の根源
この立憲主義は、中世ヨーロッパにその根源を求めることができます。
立憲主義の根源は17~18世紀頃ですが、それ以前にも国家権力に歯止
めをかけるという思想は存在しました。
しかし、それは貴族や僧侶などの一定の身分の特権を守るものであって、
一般市民の権利を守るためのものではなかったのです。
ここから一歩進んで国民個人個人を一人の人間として尊重し、そのため
に国家権力に歯止めをかけていくべきというジョン・ロック(1632-1704)
やジャン・ジャック・ルソー(1712-1778)らによって説かれていきました。
ジョン・ロックはのちのアメリカ独立宣言(1776)
や日本国憲法の第13条に引き継がれる「自然権思想」を提示します。
- 人間は生まれながらにして自由かつ平等であり、生来の権利である自然権『生命(life)・自由(liberty)・財産(property)』を持っている。
- この自然権を確実なものとするために、国民は相互に社会契約を結び政府に権力行使を委任した。(契約による政府)
- そして、その政府が権力を恣意的に行使して国民の権利を不当に制限する場合には、国民は政府に抵抗する権利(抵抗権)を保障する。
このように、個人の人権を守るために国家権力に歯止めをかけるシステム、
すなわち、立憲主義の基礎が確立されていったのです。
日本国憲法の立憲主義のあらわれ
この立憲主義の基づく憲法は、
- 成文憲法(注1)をとり、
- 硬性憲法(注2)である
ことが一般的になります。
それは、国民と政府の「契約」なので文書の形として残しておくべきという
ことと、憲法を法律のように国家側が勝手に改正できないようにしておくべき、
という発想から帰結しています。
もちろん、
日本国憲法も成文かつ硬性の形を採っています。
理解という意味では、ここの部分も、日本国憲法に当てはめてイメージできるといいと思います。
※
- 注1 成文憲法・・・文書の形で残しておく憲法。憲法典
- 注2 硬性憲法・・・法律よりも改正が難しくなっている(改正要件が厳しい)憲法
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