たまに択一問題の肢として出題されている。さほど気にすことはないが、過去問などでチェックしておくと良い。
- 第32条
-
何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。
裁判を受ける権利とは、他の公権力から独立し公平な司法機関に対して、国民が平等に権利・自由の救済を求め、かつ、独立・公平な司法機関以外の機関から裁判されることのない権利をいいます。個々人の権利・自由が侵害されたとき、究極的に救済し得るのは裁判所といえるでしょう。
三権分立が確立されている日本においては、司法権は立法権・行政権とは一線を画し、独立した立場を採っています。
さらに、法の支配を採用している立場より、違憲立法審査権を有している裁判所は、人権保障を確立するためには非常に重要な役割を担っているといっていいでしょう。
憲法典にいくら人権規定が羅列してあっても、それが侵害されたときに裁判所に救済を求められないのでは全く意味がありません。そこで、何人も裁判を受ける権利を奪われないと規定しているわけです。
保障の内容
刑事事件においては、被告人が公正な裁判を受ける権利を保障しています。「公正な」裁判を受ける権利ですので、「国家からの自由」である自由権的性質を有しているといえるでしょう。
37条1項にも同様の規定が置かれていますので、
ご紹介しておきます。
- 第37条1項
-
すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
民事裁判・行政裁判は?
32条は刑事のみでなく民事裁判・行政裁判も「裁判」に含まれます。
ただし、刑事裁判とは意味合いが少々異なります。具体的には「奪われない」の部分ですが、民事・行政事件においては、人々が裁判所に訴えを提起する権利が「奪われない」になります。
このように、32条はの「奪われない」は民事・行政においては裁判請求権、刑事においては裁判所の裁判の拒絶が許されないとされています。
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憲法32条は「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」です。
このウェブサイト記事の「保障の内容」に、
「民事・行政事件においては、人々が裁判所に訴えを提起する権利になります。」
という説明がありますが、
それだと「裁判所に訴えを提起する権利」となりますから、
「裁判を受ける権利を奪われない」を満たしません。
裁判所へ訴えを提起することは保障されるが、
民事訴訟法3条9項によって訴えを却下されている訴えが現実にあり、
提起したが裁判を受けられない訴えが現実にあります。
憲法は、裁判を受ける権利を「奪われない」ことを定めているのですから、
(適法に提起された)訴えが裁判されないのは憲法違反だという解釈が正しく、
「人々が裁判所に訴えを提起する権利」という解釈は違います。
コメントが少し気になったのでコメント主さんに質問です。
このサイトや伝統的通説や判例がとるような考え方だと、民事訴訟法3条の9の適用により、本案判決を受けられない場合のように実質的に「裁判」を受けられなかったといえる場合に問題があるから、解釈を再構成した方がよいってことですか?
そもそも32条は、民事事件・行政事件についても定めているのか、みたいな説は見たことがありますが、その考え方は知りませんでした。
ググったら最高裁平成28年3月10日の判例の原告の主張に近いようなものがありましたが、こういうことですか?
「第37条1項 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。」の下行に「そして、民事・行政事件においては、人々が裁判所に訴えを提起する権利になります。このように裁判請求権、 裁判所の「裁判の拒絶」は許されないとされています。」とありますが、刑事事件においては、ということですので、後半の部分は間違っていませんか?
管理人です。ご指摘ありがとうございます。
だいぶ言葉足らずでした。失礼いたしました。
加筆にて修正いたします。