三菱樹脂事件ほどではないが、こちらの事件も重要。
「三菱樹脂事件」は民間企業と試用期間の従業員の話でしたが、
こちらは私大とその学生の話です。
ほぼ同じような判決ですので、
「三菱樹脂事件」との理解の補充に役立つと思います。
事件の概要
私大である昭和女子大学はその指導精神に基づき「生活要録」
という学生規律を定めていました。
とある学生(2名)が、
無届で政治的暴力行為防止法案に対する反対署名運動を行い、
許可なく外部政治団体に加入申請中でした。これは「生活要録」に反する行為でした。
大学側はこれを制止しようとしましたが、学生側はこの対応に対して対決姿勢を明らかにしてきました。
すると、大学側は学校教育法施行規則36条4号に基づき、2人の学生を退学処分。学生側は身分確認訴訟を提起。
第一審の東京地裁は、私立大学も公の性質を持つ(教育基本法6条)ことを強調しつつ、その上で憲法19条(思想・良心の自由)・同14条(法の下の平等)、教育基本法(旧法)3条の「寛容の基準」に反するとし、処分は無効であるとしました。
控訴審では、第一審を取り消し、「退学処分は社会通念上著しく不当であり、裁量権の範囲を超えるものと解しがたい」としました。
学生側は最高裁へ上告。
- 第14条【法の下の平等、貴族の禁止、栄典】
-
すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受けるものの一代に限り、その効力を有する。
- 第19条【思想及び良心の自由】
-
思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
争点
- 「生活要録」の違憲。
- 退学処分の違憲。
- 退学処分における裁量権のゆ越。
判旨要約・解説
憲法19条、21条、23条等のいわゆる自由権的基本権の保障規定は、・・・専ら国又は公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互間の関係について当然に適用ないし類推適用されるものではない・・・
学生の政治的活動につきかなり広範な規律を及ぼすこととしても、これをもって直ちに社会通念上学生の自由に対する不合理な制限であるということはできない。(中略)実社会の政治的社会的活動にあたる行為を理由として退学処分を行うことが、直ちに学生の学問の自由及び教育を受ける権利を侵害し公序良俗に違反するものではないことは、当裁判所大法廷判例(ポポロ事件判決)・・・の趣旨に徴して明らかである。
大学側はもはや控訴人が大学の教育方針に服する意思が無く「教育目的を達成する見込が失われた」と判断したものであり、この判断は社会通念上合理性を欠くものであるとはいいがたい。
私人間効力について、
間接適用説を打ち出した「三菱樹脂事件」にすぐ後に出た判決です。
第一審では直接適用説とも言えるような判決を出していますが控訴審ではすぐ取り消していますね。
「三菱樹脂事件」でもそうでしたが、
最高裁は間接適用説を取り入れつつも、積極的ではないというか、
規範を立てつつも、そのあてはめは結構厳しい印象があります。
「私人間による人権侵害」と「私的自治の原則」とのバランスでは、
「私的自治の原則」に比重を置いているのではないでしょうか。
処分裁量権を広範に認めている判旨と言えるでしょう。
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