憲法尊重擁護義務「国民は憲法を守らなくても良い」ってホント?

「国民は憲法を守らなくても良いの知ってた?」て聞かれたことありませんか?私は人生で2回あります、忘れたのか、同じ人から2回。

その真偽を明らかにしたいと思います。「憲法尊重擁護義務」の話。

憲法尊重擁護義務とは

先ほどの話、ある意味では事実です。憲法で規定されています。99条の憲法尊重擁護義務(けんぽうそんちょうようごぎむ)

憲法99条(憲法尊重擁護義務)
天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

憲法尊重擁護義務とは、字の通り、憲法を守らなければならない義務を意味します。

公務員=国家権力

この規定のポイントとして、この義務を負っているのは公務員となっていること。

公務員とは、国家公務員や地方公務員はもちろん、検察官、警察官、自衛隊員、公立の学校の先生、国立大学の教授や職員等、行政に携わる人。99条にある通り、天皇及び皇室も、国会議員、裁判官等も公務員になります。

そして、公務員とは国家権力を指します。法律等に基づいて国家権力行使を担っていく人たちです。

このように、憲法自身が法律を制定したり法律を行使し権力を行使する公務員に向かって、「お前たちは憲法を守らなければならない」と命令しているのです。

日本国憲法の根源的由来、近代憲法の本来の役割からすれば当然なのですが、このように、日本国憲法にも公務員が憲法を尊重し擁護しなければならないと規定があるんですね。

公務員の服務宣誓義務

国家公務員法には服務宣誓が規定されており、入職時に服務宣誓が義務付けられています。その宣誓とは以下の通り。

私は、国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務すべき責務を深く自覚し、日本国憲法を遵守し、並びに法令及び上司の職務上の命令に従い、不偏不党かつ公正に職務の遂行に当たることをかたく誓います。

この宣誓は公務員である間は課せられるものであり、違反には罰則が伴います。

憲法は国民に向けられた命令ではなく、国家権力に向けられた命令であるとはお話しました。憲法が、国民を制限する側の国家権力を制限するということは、憲法は国民の自由・権利を守る役割を担っているという図式がお分かりになると思います。

憲法の名宛て人は国民ではない

あらためて、ここに名が無い国民はどうなんでしょう。解釈上憲法尊重擁護義務を負うのでしょうか。結論から言えば、義務はないと言えるでしょう。

99条には「国民」という言葉は出てきませんし、一部の規定を除き(納税義務・勤労義務・教育を受けさせる義務)、日本国憲法の中には国民を名宛て人とした規定はないんですね。

ということは、国民には憲法を守らなければならないという義務はないという解釈の方が自然。実際、そう言い切っている学者さんなどもいらっしゃいますし、通説はそんなかんじです。憲法学的にはそれでOKです。

日本国憲法は価値相対主義

日本国憲法の根源思想から言えば、そう解釈するべきかもしれません。

日本国憲法は価値相対主義を採用しています。物に対する価値は人それぞれでそれでいいという考え方ですが、まさに、「個人の尊厳、個人の尊重」ですね。

参照:憲法13条幸福追求権をわかりやすく解説

ですから、憲法をどう思おうがそれは個人の自由であり、守る守らないの判断も個人の自由ということなのですね。

守る守らないは自由だが、悪いことすれば捕まるのだしそこは重要なことじゃないという、随分リベラルなスタンスなのです、日本国憲法は。

まとめ

以上、憲法尊重擁護義務についてお話させていただきました。いろいろ意見はあると思いますが、99条はそういう規定だし、日本国憲法もそういう思想が根源になります。

個人的見解は、最高法規制でもあるし、国民を拘束するものではないが、尊重はするべきという感じでしょうか。