三権分立の一つである立法権についてお話していきましょう。立法権は41条に定めがありますが、三権分立との絡みなしに解説するとは困難ですので他権と絡めて説明します。
立法権の中身については41条の文言にある一説の解釈をもとに解説させていただきます。
立法権とは
立法権とは何でしょうか。三権分立の立場からも含めてわかりやすく解説します。下、立法権の条文です憲法41条。
第41条
国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。
憲法41条は三権分立(司法権・立法権・行政権)の根拠条文の一つであり、憲法は国会にその立法権の権限を授けています。
ちなみに、司法権は裁判所、行政権は内閣です。
三権分立とは、国家権力を3つの作用(司法・立法・行政)に区別・分離して、それぞれが不当に権力増大しないよう互いを抑制して均衡を保ち…
日本国憲法「第6章 司法」の最初の条文76条の1項には、「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に…
行政権とは、国会が作った法律や予算に基づいて行政活動を行っていく権限を言います。ではこの行政とはどういった意味
行政権とは、国会が作った法律や予算に基づいて行政活動を行っていく権限を言います。ではこの行政とはどういった意味
立法権とは法律を制定する権利のことです。ご存じの通り、法律は国会で制定されており立法権を行使しています。三権の中でも国民から直接選挙された代表者で構成されており、まさに民主主義を体現している機関ですね。
国権の最高機関とはどんな意味?
民主主義国会においては国政の中心機関と言えるでしょう。ちなみにですが、41条にある「国権の最高機関」とはそういった意味で使われており、ヨショ’(自画自賛?)的な意味であり法的な意味はないと言われています(政治的美称説)。
唯一の立法機関とは
41条には「唯一の立法機関」とあります。これはどういった意味なのでしょうか。簡単にいえば立法権を国会が独占しているという意味になります。憲法は裁判所にも内閣にも立法を許していないのですね。
法律は国民に向けられたものであり人権を制限しうるものです。参照:憲法と法律の違いをわかりやすく解説
民主主義で選ばれた国会議員に、自分たち国民の人権を制限し得る法律の制定を独占させることによって、実質的な民主主義の本質に担うと言えるでしょう。
こういうのを「治者と被治者の自同(同一)性」と言います。民主主義の本質のひとつですが、覚えておくと良いかもしれません。
「唯一の立法機関」2つの原則
「唯一の立法機関」とは国会が立法権を独占していると言いましたが、立法権を独占しているとはどういうことなのか、もう少し詳しく見ていくことにしましょう。
「唯一の立法機関」は2つの原則からなるものとされています。それは、
- 国会中心立法の原則
- 国会単独立法の原則
国会中心立法の原則
国会中心立法の原則とは、憲法の特別の定めがある場合を除いて国会以外で立法することは許されない原則を言います。
政府(行政権)や裁判所(司法権)が立法することはできません。「唯一の立法機関」のイメージそのままですね。
国会単独立法の原則
国会単独立法の原則とは、国会による立法は、国会以外の機関の参与を必要としないで成立することを意味します。
例えば国民投票を必要とする立法とか、それはダメだよということ。国会の議決のみで成立する原則を言います。
「唯一の立法機関」の例外
原則あれば例外あり。ということで、「唯一の立法機関」の例外を見ていきましょう。なぜ例外があるかというと、端的に言えば、そうした方がベターだから。
例外がある理由
立法には専門性を伴うものであって、国会がすべてにおいて専門性を有するわけではありません。他機関に委任したり関与させた方が良い場合だってあるのです。「唯一」にこだわらず、合理的に柔軟的に。
それは憲法の定めがあったり、解釈であったり。
例外規定一覧表
下の表は、国会中心立法の原則と国会単独立法の原則の意義と例外を表したものです。試験勉強の方はこういうところ非常に危ないです。「原則と例外」の例外は出題する方もオイシイ題材ですから、注意を。
この部分は最近の行政書士試験にも出題されており(令和3年度)重要な部分です。条文はバラバラで法律も混ざっていますので行政書士の憲法は難しい?学習ポイントや効果的な勉強方法は?にある通り、条文番号はあまり気にせずこの括りで覚えると良いと思います。
国会中心立法の原則 | 国会単独立法の原則 | |
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意義 | 国の立法はすべて国会によって行われること | 立法の手続に国会以外の機関が参加することが ないこと |
例外 |
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補足①:内閣政令提出権
例外の部分で問題にしたいのは、まず「内閣の政令制定権」です。内閣の政令制定権とは委任立法のことです。
委任立法とは、本来法律で定めるべき事項を他の機関による下位の法形式に委ねることを言いますが、これが「唯一の立法機関」の41条に反するのではないかという問題があります。
専門知識があり、機敏性に富む行政部に委任する必要性があり、73条6号但書は、委任立法の存在を前提としていると思われ、委任立法は国会中心立法に反しないとされています。
もっとも、全くの白紙委任は許されず、個別・具体的委任でなければならないと考えていきます。
補足②:内閣法案提出権
次が、国会単独立法の原則の例外である「内閣の法案提出権」です。
内閣の法律発案権は、国会の議決を拘束するものではなく、また、議院内閣制の建前から言えば、内閣の法律発案権を認めるのも妥当な線であると考えます。
まとめ
以上、立法権について解説させていただきました。
普段政治ニュースで国会のことは流していますが、それとも違う、何ともつかみづらい話だったかもしれませんが、
- なぜ立法権を国会に独占させているのか
- (余裕があれば)場合によって他機関に立法を関与させている理由
を押さえておいてほしいと思います。